苦い色

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会計事務所でのバイトが始まった。 まず、所長先生を含め、ベテラン会計士さんが二人。 桜井さんは現在、資格取得のために勉強中とのことだ。 あとは、営業兼事務といった感じの男性が一人。 もう一人、女性の事務員さんがいるらしいんだけど、現在、ぎっくり腰で療養中とのことだ。 「仕事の事は、本当はその木原さんに聞いてもらうのが一番なんだけど、まだ今週いっぱいは無理らしいから、その間は、俺が教えるから」 と、桜井さん。 私は、心の底から、早くその木原さんが復活してくれますようにと願った。 桜井さんから教わるのは、恐れ多いというか、腰が引けてしまう。 「俺がいない時は、この人に聞いて」 と指されたのは、営業兼事務の、河野さん。 「どうもー、河野です」 ヒラヒラと手を振りながら答える様は、どうも軽い感じがする。 茶髪と言ってもいいくらいに明るい髪をサラッと揺らして、笑うと八重歯がのぞく。 「プライベートなことでも、任せてくれたらいいよ」 「こういうのは聞かなくていいから」 ビシッと切り捨てて、桜井さんは説明にかかった。 軽いノリの河野さんもどうかと思うけど、やっぱりこの人は怖い。
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