始まりの色

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だけど、再婚してからは、実際にお父さんがお母さんの事を聞いてきたのは、最初のうちだけだった。 もう、お父さんの中では、お母さんの事は片づけられてしまってるんだ。 私の事はいっぱい聞いてくれるけど、お母さんの事には触れない。 それでも、お母さんの期待に満ちた目を見ると、本当の事が言えなくなる。 降り積もる嘘。 それが辛くて、だんだんと私は、面会日を重く感じるようになってきた。 おとうさんには会いたい。 ゆき兄さんにも、会いたい。 一度、私が熱を出して、面会に行けなかったことがあった。 そうしたらお母さんは、ものすごく残念そうに言ったんだ。 「だめねえ、肝心な時に熱を出すなんて」 それは、行けない私を思って残念がってくれているんじゃなかった。 お父さんに会って、お母さんへの気持ちを推し量ってくる役目を果たせなかったからなんだ。 お母さんのズルさを、はっきりと感じたのは、この時だった。
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