76人が本棚に入れています
本棚に追加
成沢先生は、ボイストレーナーというお仕事をしていて、児童合唱団にいた時にお世話になった。
偶然、同じマンションだったとわかって、時々、お家に遊びに行ったこともある。
娘の翔子さんと二人暮らしで、私より10歳近く年上の彼女にも、仲良くしてもらった。
「また、会えるわよ、きっと」
「元気でね、香純。
歌は、続けるんだよ?」
翔子さんも歌が大好きで、すごく上手だった。
私は頷いたけど、もう二度と会うことはないだろうと、ぼんやり思っていた。
転校することには、それほど抵抗を感じなかったのに、この二人と離れるのは、大好きな歌からも遠ざかるみたいで、寂しかった。
児童合唱団は、6年生の時に退団しなくてはいけなくて、進学した中学には、合唱部がなかったんだ。
新しい学校には、あるといいな。
この頃から、少しずつ、少しずつ、私の周りのものが、削り取るように離れていっていた。
最初のコメントを投稿しよう!