始まりの色

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6年後。 私は、念願の教育大学の音楽コースに進学していた。 一年、浪人生活をしてからだったから、他の生徒より、私は1歳上。 あれから、だんだんとわかってきたのは、お母さんの実家からの仕送りが、減ってきたことだった。 時々顔を見せてくれていたおじいちゃんとおばあちゃんは、めったにうちに来なくなっていた。 お母さんは、ひたすらにおじいちゃんたちの悪口を言い、伯父さんのお嫁さんである伯母さんのことを罵っていた。 「きっと、あの人の差し金よ!」 それでも、お母さんは働きに行こうとはしなかった。 減った仕送りの分、私は高校生になると、バイトに行くようになった。 最初は、お母さんに反対されたから、内緒で。 さすがに、すぐにバレたけど、私の稼ぎでも助けになるとわかって、お母さんは何も言わなくなったんだ。 音大に行きたい。 そのためにも、資金が必要だったから。 お父さんには、言えなかった。 それでも、時々、お父さんに会って、ゆき兄さんのことを聞くのが楽しみだった。
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