始まりの色

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ゆき兄さんは、バンド活動をずっと続けていて、高校を卒業後も進学しなかった。 その頃には、ライブハウスでもかなり人気が出てきていて、プロの関係者からも注目されるようになっていた。 そしてついに去年、プロデビューを果たしたんだ。 今では、ロックバンド”パンゲア”のギタリスト、ユキとして、活躍している。 ちなみにこのバンド名、古代の大陸名からきたわけではなく、ただ単に、メンバー4人が、小学校の給食で出た揚げパンが大好きだったことから、文字を入れ換えて付けただけだという。 忙しくはなったけれど、たまに電話をくれたりもして、変わらずに繋がってくれている。 妹として。 ゆき兄さん、と呼ぶのが苦しくなったのはいつくらいからだっただろう。 兄さんじゃない。 兄と妹として、一緒にいたいんじゃない。 いつの間にか、ううん、もしかすると、一番最初から、私は村井行成という男の人として見ていたんだ。 男性にしては繊細な顔立ちも、サラサラの髪も、ちょっとハスキーなのに時々甘く響く声も。 口が悪くて、でも優しくて、家族思いなところも。
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