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ちょっと冷たそうな目が、まっすぐにこちらを見るので、体がすくみそうになる。
「兄貴、香純が怖がるって」
と、行成さんが言ったとたん、その目元が慌てたようにさまよう。
「ただでさえ、眼つき悪いんだから。
小学生相手に、何やってんだよ」
「いや、別に俺は」
「兄貴、これでも弁護士の卵でさ。
新米だって侮られないように、すっげー威嚇してんの」
「行成、余計なこと言うな」
さっきまでの無表情さはなりを潜め、航平さんは気まずそうに口元を押さえている。
「弁護士さん、なんですか?」
と、おずおずと訊いてみると、背の高い彼は私を見下ろしてから、すっとかがんだ。
目線の高さが揃う。
「困ったことがあったら、言って来るといい」
「小学生が弁護士に頼るって、どんな時だよ」
行成さんが呆れたように言ったけれど、私は、航平さんに子供ではなく一人の人間として扱ってもらえた気がして、ちょっと嬉しかった。
「はい」
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