始まりの色

7/29
前へ
/454ページ
次へ
小さな声で応えると、彼は軽く頷いてから、また立ち上がった。 「じゃあ、行くから。 お父さん、すみません」 真理子さんにも小さく頷き、彼は駅の中に入っていった。 「それじゃあ、行こうか」 私たちは、反対に駅の外に向かう。 今日は、お父さんの発案で、遊園地に行くんだ。 再婚した父親の家族と、こうやって交流をすることが普通なのかは知らないけど、お父さんが私とも繋がりを保とうとしてくれているのは、嬉しかった。 お母さんとの生活は、時々、息が苦しくなるから。 離婚するとき、お母さんは私を手離そうとしなかった。 その時は、お母さんに愛されているんだと思って、単純に嬉しかったけれど、あれから4年たつと、ちょっと違和感がある。 だって、お母さんが一番大事なのは、自分みたいだから。 別に、無視をするとか、ご飯を作ってくれないとか、そういうことではないけど、私と向き合っていても、どこか上の空な気がするんだ。 お母さんは、働いていない。 私たちは、お母さんの実家のおじいちゃんが、結婚するときに買ってくれたマンションの部屋に、そのまま住んでいる。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加