君の半分と僕

12/13
前へ
/13ページ
次へ
担当医は絵里の目を見ながら答える。 「わたくしに昨夜電話が掛かってきまして……自首するとの事でした。わたくしも長く渡辺と働いてきましたが、まさか下半身を所持していたとは……驚いています」 担当医はポケットから一枚のメモリーカードを取り出し僕達に見せる。 「そしてこれを、早朝に渡辺先生から受け取りました」 「それは?」 僕がカードを睨みつけると、担当医は静かに答える。 「胴体分離症の治療法が入っています」 僕達は驚きのあまり声が出なかった。 「渡辺先生は見つけたのです。だから自首をした。データを確認しましたが、革新的なアイデアがここには記されていました。これなら治せる」 興奮した様子で担当医は語り、一言付け足す。 「まぁ、渡辺先生一人の力ではないでしょうが……色々な研究者に協力を募っていたようですね」 「いつですか?」 絵里は声を震わせて言った。 担当医は質問の意図を把握できずに首を傾げる。 「いつになれば、その治療法が使えますか?」 「あぁ……」と担当医は言い、「すぐに……は無理ですね。しかし、いずれ確実に」と笑顔を見せる。 絵里は涙を流し「良かった……良かったよぉ」と何度も言葉を零した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加