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担当医は絵里の目を見ながら答える。
「わたくしに昨夜電話が掛かってきまして……自首するとの事でした。わたくしも長く渡辺と働いてきましたが、まさか下半身を所持していたとは……驚いています」
担当医はポケットから一枚のメモリーカードを取り出し僕達に見せる。
「そしてこれを、早朝に渡辺先生から受け取りました」
「それは?」
僕がカードを睨みつけると、担当医は静かに答える。
「胴体分離症の治療法が入っています」
僕達は驚きのあまり声が出なかった。
「渡辺先生は見つけたのです。だから自首をした。データを確認しましたが、革新的なアイデアがここには記されていました。これなら治せる」
興奮した様子で担当医は語り、一言付け足す。
「まぁ、渡辺先生一人の力ではないでしょうが……色々な研究者に協力を募っていたようですね」
「いつですか?」
絵里は声を震わせて言った。
担当医は質問の意図を把握できずに首を傾げる。
「いつになれば、その治療法が使えますか?」
「あぁ……」と担当医は言い、「すぐに……は無理ですね。しかし、いずれ確実に」と笑顔を見せる。
絵里は涙を流し「良かった……良かったよぉ」と何度も言葉を零した。
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