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“本当に?”
心の中で、誰かがそう呟いた。
“あんたは同情しているだけだろ?可哀想だから一緒にいる。本当はちゃんとした身体の女性と付き合いたい。そうじゃないのか?”
もう一人の僕が、僕の本心を聞きだそうとしてくる。
それが現れたのはつい最近のことである。
親に絵里の事を話した時に「別れなさい」と言われ、それから絵里を否定する自分が現れた。
その時は「どうしようが僕の勝手だ!」と反抗したのだが……
「ねぇ!」
でも、その親の言葉が今でも心に引っ掛かっている。
「ねぇってば!隆ちゃん!!」
僕はハッとして前を見た。絵里が僕を現実世界へと引き戻す。
「病院、こっちだよ」
絵里は指をさして間違いを訂正する。
「どうしたの?ボーっとして考え事?」
「え?いや……何でもないよ」
そんな事、言えるわけがない。絵里の悲しむ顔を見るなんて……
****
病院に着き、受付を済ませて名前を呼ばれるのを待つ。
予約時間よりも20分も待たされて絵里は呼ばれた。そして僕は彼女を抱えたまま診察室へ入り、そのまま椅子に座る。
「調子はどうですか?」
担当医である渡辺先生の質問に絵里は答える。
「特に悪い事はないです」
「そうですか」と渡辺先生は言い、絵里の身体を触った。
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