4人が本棚に入れています
本棚に追加
1. ネズミ色にくすんだセダン
都市高速の料金所。助手席の「オッチャン」から渡された千円札で、通行料を払った。
左足はクラッチを奥まで踏み込んだまま。セカンドに入っていたシフトノブをローに送り込むと、手の平にコクッという軽い感触が返ってくる。
アクセルペダルをそっと踏み込んでエンジンの回転数を一千回転強にキープ、奥まで踏み込んだクラッチペダルをスパッと戻して……
ガクンッ。エンストした。
「なにやってるんだ、お前」
「うるさいな。ここ、ちょっと上り坂になってるから……」
「クラッチはな、半分まで戻して、エンジンの音聞きながら丁寧に繋げ。半クラだ、半クラ」
「それくらい知ってるって」
「ホントに免許取れたのか、それで」
「無免でバイク乗り回してた暴走族に言われたくない」
「ほら、後ろの車が待ってる。舐められる運転するなよ」
「だから、焦らすなって」
最初のコメントを投稿しよう!