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「やっべ、雨の時間だ」 空になった複数のボトルをそばの布袋の中に詰め込むと、肩にひっかけて素早くその場を離れる。 下層に落下しないよう設置されている手すりのもとに停めておいた小さな正方形の鉄板に片足で飛び乗り、板に垂直に伸びている柱の上にある八角形のプロペラのようなものから垂れる、先が丸く曲がった赤銅色の鉄の棒を勢いよく掴んで下に引いた。 モーターが唸る音とともに少年の足元の鉄板から白い煙が激しく吹き出す。そのまま板がやや通路の面から浮かぶと、速度をあげて少年を乗せたまま通路を滑らかに動いていった。少年は体を左右に傾けバランスを取りながらその移動機器を操縦する。 中層区画に住む人々のもつナンバーが彫り込まれた板が掲示された小さな扉の前をいくつも通り過ぎ、細い通路の障害物を跳ねて交わしつつ速度を落とすことなく階段を上昇していく。半円状の家々が並んで出来たトンネルを抜けた先にある一つの家の前で、少年は機器の速度を落とす。〈88B5〉と彫り込まれた扉が少年を感知して鈍い音を立てながら開くと、彼は機器に乗ったまま飛び込んだ。 「ふー……」 再びプロペラから伸びる棒を強く引いて機器を停める。少年が安心から息をつくと、家の奥からくすくすと笑う声がした。
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