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「あめ……」 サヤがぽつりとつぶやくと、カイもそれに便乗して出窓の向こうに目をやる。二人の様子をみていたキューシャが口元を緩めて微笑むと、壁にかかっている簡易ハンモックに腰を下ろした。 少しの間、壁や家の外の通路、そして窓などに雨が激しくぶつかる音以外は何も聞こえない、サヤが何かを言ってもカイに届くことがない、そんな時間が続く。雨の時間に家の外に出ることは許されなかった。 徐々に雨が落ち着き静けさが戻ってくると、サヤはふっと息をついて出窓から離れる。雨の時間以外でも家の外へ行くことを控えるようキューシャに言われているサヤにとっては、雨は大きな楽しみだった。 床を歩くサヤの足音が聞こえるようになると、カイも出窓に張り付くのをやめてテーブルのそばに座る。キューシャは変わらずハンモックに揺られながら、そばのクッションに沈んでいくサヤに笑いかけた。垂れた優しげな目元がサヤに向けているものには、いわゆる親のものに近い気配がある。 「今日のはちょっと荒々しかったね」 「ん。当番のひと、ざつ」 「あはは、サヤは手厳しいなあ。また次の雨まで楽しみだね」 「うん」 しきりに頷きながらキューシャの意見に賛成するサヤが元気そうであることに安心しながら、カイは掃除から持ち帰ってきたボトルを洗浄するための棚にしまう。ふと視線を感じて振り返ると、紫色の瞳と目が合った。
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