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「な、何すか、キューさん」 「ちょっとカイに、おつかいを頼もうかと思ってね」 にこやかに話す柔らかな声。カイに注いでいる目線も、サヤへのものと同じ色を持っている。カイは耳にかけられるほどの長さの髪をがしがしとひっかいて不思議そうに首をかしげた。サヤほどではないものの幼さを感じる丸い頬は、キューシャの庇護欲をかきたてる。 「いや、さっき言いかけた話についてね。傘がだめになってしまったなら、そろそろ雨をもらいに行かないといけないなあと思って。カイのがだめってことは僕らのもだめなんだろうし」 「はあ……」 「だから、おつかい。いつもの井戸のところでいいからさ」 カイは間髪をあけずに「あー」と納得したような声で応じて、ちらりと扉の方を見た。扉のもとには先ほどカイが乗り回した錆まみれの傘が壁にもたせかけられている。 「わかった、行っとく。タンク借りていい?」 「もちろん。靴のそばの戸棚の中にあるやつならなんでも、好きなもの持って行っていいからね」 「うす」 カイが重い腰をあげて玄関先の方へと足を動かそうとすると、カイのズボンがそっとひかれた。
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