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「サヤ? どうした?」 カイのズボンからシャツに手の位置を変えて、サヤはじっとカイの目を見つめ黙る。言語を習う機会がなかったサヤは、キューシャから教わっている最中で、自分の感情の機微を言葉にすることにまだ慣れていない。無口なのではなく、少し考える時間が長いのだ。 「サヤも」 ぽつり呟かれた一言が、澄んだ声に乗って響く。 その言葉の意味を理解するのは難しくなかったが、カイは少し迷ってから助け舟を求めてキューシャに目配せをした。長いまつげの向こうの瞳も、困ったように笑っている。 「サヤもおつかいに行きたいのか?」 カイは言い直すようにサヤに聞く。自分の気持ちを正確に表現したカイの言葉に目を輝かせながらサヤは深く頷いた。 「うん」 カイはキューシャを見る。白色のシャツの襟元を人差し指で緩めて小さく唸ると、キューシャは立ち上がった。高い棚の引き出しから何かを取り出すと、サヤを手でこまねいた。 「サヤ、ちょっとおいで」 「うん」 サヤは、そわそわしながらキューシャのもとへかけよった。
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