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ようやく耳にかかる程の短い髪をなでてノダはコグレの言葉が続くのを待つが、コグレはうつむいたまま口をつぐんでいる。何かを考え込むようにゆっくりと瞬きをすると、再び顔をあげて苦い顔をした。 「この際、解析結果の詳しい内容というのは問題ではないんです。それよりも、材質や成分から見るに、中層のチャイ、しかも少年が一人で手に入れることが出来るものではないことがわかった方が問題といいますか……」 コグレは言葉尻を濁す。ノダは丸い少女のような瞳をぱちぱちとしばたかせてから、そっと首をかしげた。 「つまり、あの少年に上層の人間かラボが一枚かんでるか、少年がどこかの反ラボ組織に入っている可能性があるってことね。もし、彼とかかわりがあるのがラボの人間だった場合は、そいつはとんだ裏切り者だわ。早く見つけないと船乗りやニキの思い通りよ」 焦るように唇をかみしめるノダを見て、コグレも頷き返す。 「ラボの情報を外へと流している人物がいるであろうという話はかなり前から挙がっていたことです。それが、内部の者か外部の者かはわかりませんが」 「とにかく、あの少年はにおうってことでしょ。あー、もう、ややこしいわね。ただえさえペア殺しだのなんのって面倒なのに」
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