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「……。何よ、これ」
コグレの手のひらをのぞきこんで、ノダは不審げな目で尋ねる。大きなレンズが組み込まれたそれは、部品というよりもそれだけで成立する小さな機器のようであった。コグレは手に乗せていたものをロッコに返す。ふっと息をつくと、慎重な目でノダを見た。
「反ラボ側の追跡です。向こうには優秀な技師がいるという噂がありますし、これで我々の様子をのぞき見しようとしたのでしょう。もしかすると、会話も盗み聞くことができるのかもしれません。ロッコが優秀で助かりました」
「ありがとうございます」
小さく頭をさげるロッコをちらりと見て、ノダは息をのんだ。
「これ、どうせ一つや二つなんてかわいいものじゃないでしょ? もしかしたら、ラボの中にもあるかも……なんて」
「ラボの中は厳しくても、ラボの窓や付近のパイプに忍び込むことが出来れば情報を得ることは簡単でしょう。そう思うと、心が休まりませんね。ペアを狙っていたのは、案外彼らなのかもしれない」
「はー……」
疲労がにじみ出ているため息を盛大につくと、ノダは椅子から立ち上がる。上品な飾りがついているにしては、その椅子が立てる音は軽やかだった。
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