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ーーー キューシャはこれまで、他人に期待することなく生きてきた。というのも、アムルンで生活するにはそれが一番賢い方法であると実感する機会が何度もあったからである。その考え方は、目の前に立ってにこりと笑っている白衣の前でも変わらないはずだった。 大きなフードで顔を隠したまま「で、なんでしたっけ」と小声で聞き返す。バインダーを片手に持ったコグレは、数度頷いてからため息をついた。 「要件は三つです。まずはそのフード、なんとかなりませんか。顔が確認できないことは良いとされません」 「……すみません」 「いつもそれですからねえ。本局の会議に提出している資料が通れば、顔が見えるように過ごすことという通告が届くと思いますから、それには従うようにしてくださいよ」 「……」 何も言わないままのキューシャに肩をすくめると、コグレはバインダーに挟んでいるものに何かを書きつけて顔を上げる。 「本局からの指示で、現在中層区画に住む方々に個別にお話を伺って回っています。急で申し訳ありませんが、ご協力お願いしますね。これから言ういくつかの質問に、正直に答えてください。まずは……」
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