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玄関にある仕切り布をこえてすぐの廊下の角で、カイは必死に息を殺していた。ラボ隊員の声とそれに返事をするキューシャの声が聞こえる度に、カイの胸は強く波打って息苦しささえ感じるほどである。
唇を噛みしめているカイの隣には、目を丸くしているナナとサヤが壁にもたれて座り込んでいた。布の奥から聞こえる知らない男の話し声に、サヤは自分の膝を抱えて丸くなっている。
「……」
カイは、ズボンのポケットにあるベルに手を伸ばしながら、セトリの言葉を思い出していく。
『まだ詳しい話を聞けていないからはっきりとは言えないけれど、ラボはいま、チャイと関係がある何かの情報を探している。そう考えて間違いないんじゃないかな』
ーーチャイと関係がある何か……。
カイは、キューシャとラボの会話に耳を傾ける。神経質そうな鼻にかかった声が、「ふむ」と呟いたところだった。
「では、上層区画についてお聞きします。これまでに上層区画にたずねたことはありますか?」
「ありません」
淡々と話すキューシャの声に、カイは思わず息をのんだ。これまでに聞いたことがないほどのその冷たい声色は、ラボには効果がないらしい。隊員は変わらない調子で言葉を続ける。
「では、上層区画の人間かラボに知り合いは?」
「いません」
「そうですか」
サヤもナナも、息を殺して一刻も早くラボ隊員が去るのを期待する。
「そして三つ目、これが最後であり、本題です。〈88B5〉、この家に複数の人間が身を寄せているという噂が入っていますが本当ですか」
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