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二人の目玉が、音に吸い込まれるようにぬるりと動く。
巨大な権力の象徴であるメダルが、キューシャのズボンのポケットの中で力なく転がった。少年はなんでもないように二人を見た後、少し考えてからすっと息を吸う。
「なんだ? 俺以外にも知り合いを呼んでいたのか」
「あ……いや」
肩にかけた分厚い布で顔の下半分を隠したカイは、目だけを動かして動揺しきったキューシャを見た。そしてその目をコグレにやって、まゆをひそめる。それは、コグレも同じであった。カイを目にした瞬間に見開いた目を落ち着きなく泳がせる。こほん、とひとつ咳き込むと冷静さをつくろった。
「お構いなく。雨をしのがせてもらっているだけですので」
胡散臭くにこりと笑って、コグレはカイの足先から頭の先まで、なめ回すように見る。キューシャは間に割って入り、不快そうに顔をゆがめるカイの肩を軽く叩いてたしなめた。その目は、「どうして出てきたんだ」と叫んでいるようにカイには見える。
「君は……」
コグレの言葉にキューシャは息をのんだ。慎重に話さなければ、と肩に力が入る。知っているはずのない言葉や、言ってはいけない言葉が、彼の周りにはあふれていた。
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