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ノイズが続いた後に、焦ったように「はい」と話すセトリの声が聞こえてきた。
『誰かな』
「セトリ、俺。カイ」
囁くような声で話すセトリにつられて、カイも声をいっそうひそめる。ボタンを押したまま玄関の扉にもたれた。
『カイ? どうしたの、なにかあった?』
「前にセトリが話してた、質問をするためだけにラボがくるやつ、さっきまでうちに来てた」
『え?』
セトリの声色が低くなる。サヤやナナがまだ来る気配がないのを確認しつつカイは一人で頷いた。もちろんそれは、セトリには見えない。
「自分のペアのことを知っているか、とか、関係があるか、とか聞かれてた。けど、それより、その……」
言葉に詰まるカイに、セトリは「焦らなくても大丈夫だよ」と囁く。カイは、焦らなくてはならないことを、知っていた。ベルを掴んでいない方の手を握りしめる。
「俺や前に言った妹みたいな子、それからナナは、ラボに隠れて生きてきてて、これまでずっとラボにはここに住んでることも黙ってて、ラボとのかかわりも避けてきてた。でも、さっき、俺、隠れてないといけなかったのに、ラボのやつの前に出てしまって、顔とか、見られた。だからもしかしたら、近いうちにまたラボのやつらがうちのことを色々詮索しに来るかもしれない。そういうときは……招集じゃなくても、セトリたちに助けを求めてもいいのか……?」
『もちろんだよ。いや、というより、ちょっとまって……それじゃあさっきのは……』
「何かあったのか?」
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