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セトリの声の後ろで誰かが暴れているかのような大きな物音がいくつも聞こえたかと思うと、それはすぐにやんで静かになる。カイが戸惑っていると、少し遠くでセトリが大きく息をはくのが聞こえた。 『カイ、君たちが住んでいるのはラボから見てどのあたりかな』 「真ん中にあるバカでかい時計から見て、やや左側ってところ。広い通路沿いの、二段重なっている集落のうちの上の段で……て伝わらないな、これ。てかなんで急にそんなこと……」 カイの言葉が終わらないうちに、セトリが話しだす。 『武装したある班がラボから急に出て行ったのを見たっていう連絡があったんだ。まだ見つかっていない二人には、もう少し隠れてもらっておいた方がいいかもね』 カイは息をのむ。 「……それは、向こうが武器とかでこっちに手を出してきたら、同じように返してもいいやつ?」 『それを決めるのは僕じゃないよ。でも、理不尽なのはちょっと嫌だね』 「……また連絡する」 『うん、分かった』 ボタンから指を離すと、カイはまだ物音一つしない廊下の奥の部屋に向かう。 ラボがどういう人たちなのかを知らないで、キューシャに警戒するよう言われるままに危険視していた白衣を不意打ちで近くに感じてしまった二人のことが、カイは心配だった。
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