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『少年を渡せ。さもなければ、この乗り物ごと下層送りにするぞ』 ーータイガだ。 カイは直感でそう感じた。耳から頭に入り込んで脳を直接揺さぶるような、鼓膜が破れる限界まで震わされているような、快感とはとらえがたい低い音に、カイは顔をしかめる。 ラボ隊員の白衣の首元は、襟をたてると口元まで隠すことができる仕様になっている。チンストラップを留めて顔を隠したノダは、ゴンドラの外へとつながるパイプに近づいた。 「この少年を手放しで今すぐ開放するわけにはいかないわ。聞いて確認しておきたいことがあるの。それとも、ここにいる黒服のうちの誰かが代わりになってくれるのかしら? あなたたちなら誰でも歓迎よ。聞きたいことなら山ほどあるから」 ノダは話しきると、ゴーグルの奥からすぐ目の前の人物を睨む。目がどこにあるのかは分からないが、彼女は気にしなかった。ふわりと上昇した人影がその場で軽快にくるりと回転するのを見計らってか、脇に控えていた人物が制止するように話だす。 『相手の話を聞きたいときは、家に押し入って拘束し、脅しながら連行するのがそちらにとっての礼儀なのか』
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