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ーーこれはセトリか……?
黒い影、もとい船乗りとラボ隊員の会話を聞きつつカイはまるで他人事のようにぼんやりと考える。直接的に脅された訳ではないが、「言う通りにしなければ家の中を隅々まで調査するぞ」という空気があったこと自体が、セトリたちの考えに背いているのだろうとカイは納得した。
ノダは鼻を鳴らしてあしらうように笑う。
「なんとでも言えばいいわ。丁重にお迎えしても、あなたたちはきっとどこかに不満を抱くんでしょうし。それよりも前から退いてくれない? 轢いてしまいそうで怖いんだけど」
『いいや、あなたは轢かない』
穏やかな口調に、ノダは眉をひそめる。カイも思わず肩をすくめた。ゴーグルの奥の目をひそめて、ノダは少し考えると小さくため息をつく。
「へえ……?」
『僕らはチャイだ。心臓はここにあるけれど、持ち主はここにいない、管理しているのはあなた達ラボ。ここで誰かを傷つけてあなたが失うのは、大切な友人かもしれない。そんな大事な複製品を、やすやす壊すわけがない』
「なあに、道徳の時間はじまっちゃった? そんな風に、命は尊いです、だから僕たちはペアの命も尊重していますみたいな態度をとっても無駄よ。わたしたちが回収しているのは、いずれ誰かのためになるもの。あなたたちがいたずらに奪っているのは、争いしかうまないもの」
『は……?』
セトリと思われる船乗り組員はそれ以上は何も言わなかった。カイは首をかしげる。
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