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足元がさくさくと爽やかな音をたてる。
若々しい草の強い生命力を分厚いブーツ越しに感じながら、二つの人影はゆっくりと足を進めた。その足取りは、踏みしめるようにしっかりと、あるいは、青い命を足の下へやることに罪悪感があるのか遠慮しているようにも見える。二人は、白いマスクと防護服で覆われており、大きくふくらんだ怪物のようだった。
かつてない緊張と高揚感。それには、あっけないほどに一瞬で、大人を子どもに戻してしまう力がある。どちらからとなく二人が足を止めると、一人がおもむろに自分の頭部をつかんで顔全体を覆っていたヘルメットのようなマスクをその場に投げ捨てた。マスクが芝に寝転がるのを見届けてから、男は大きく息を吸う。
「……」
満足そうに笑って深呼吸をした男性をマスクにある透明な窓から見て、窓の奥の長いまつげはゆっくりとしばたいた後に仕方なさそうに笑った。
「満足か?」
くぐもった低い声。響きはしないものの、彼らが育った環境よりもはるかに静かなその場所ではとてもはっきりと聞こえる。男は声に頷いて、自身を覆っていた防護服も脱ぎ捨てた。白を基調とした制服のような格好になって、両手を空につき出し背伸びをする。
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