21/46
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/686ページ
「さあて、このままシライの研究室に突撃します。中には彼女のチャイが複数名いるので慎重に対処してくださいねえ。マスクとゴーグルを忘れずに。向こうが攻撃的な態度でいる場合は適切な処置をしてほしいですけど、大人しくついて来てくれそうなら穏便におねがいしますよお」 「はい」 サイの言葉に研究生がはきはきと返事をする。カイは少し後ろを歩きながら、キューシャにマスクとゴーグルを着けてもらっていた。バーコードを隠す白い手袋も忘れず受け取る。白く四角い機械の中に乗り込むと、白衣の襟で顔半分を覆ったサイが説明を始めた。 「今回死体となって見つかったシライは、自分の研究室に自らのチャイを軟禁してモルモットにしていたそうです。彼女が残している記録によれば彼女の第一チャイは命を落としているはずなので、軟禁されていたのは果たして誰なのかっていうのとお、彼女の記録には不可解な点がもう一つあって……」 言葉をきって言いよどむサイに、キューシャは首を傾げる。色素の薄い刈り上げが話の続きを促していた。 「……いやあ、突撃してしまえば全部わかることですし、今言う必要もないですねえ。とにかく、彼女のチャイに、注意してくださいねえ」 誤魔化すように話すと、サイは肩を回してため息を吐く。誰かが何かを言う前に機械の動きは止まり、先ほどまでとは全く異なった、しかし同じ白色の空間が広がった。シライの研究室のフロアだった。
/686ページ

最初のコメントを投稿しよう!