433人が本棚に入れています
本棚に追加
/362ページ
「東吾さん!」
澪は涙を隠すようにして東吾の胸に顔を擦り付ける。
涙は染み入るように東吾の胸に吸い込まれた。
「死なないで東吾さん。死んじゃいやだ、死んじゃいやだよ!」
掻き毟られる不安に襲われて、澪は泣きじゃくった。
冷酷な目をして人を傷つける東吾への恐れよりも、いつか東吾を失ってしまう恐怖が、澪を覚えのない寂寥の中に突き落とす。
こうして東吾の腕に守られていても、いつかまた東吾が消えてしまうような、自分を置いていく東吾の後姿をまた、見せられるのではないかと。
それはまるで待ち伏せていたかのようなとめどない不安だった。
東吾は何も言わず、澪を抱き続けた。
最初のコメントを投稿しよう!