7. 世界に蔓延る彩色の宴

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 種々の小型機に挟まれ、人がようやくすれ違える程度の通路をひた走り――不意に訪れた横合いからの襲撃に眼を奪われる。  いや見えていた、はずだ。  間違いなく【天征眼】にコイツの姿は映っていた。  なのに不意を突かれ、右手方向の緑色小型機の影から飛び出した凶弾に、その頭部を狙う弾道と速度に驚愕する。 「なッ――!?」  冷や汗が浮かぶ。  首筋を死神に撫でられたみたいな気分を俺に味あわせたソイツは、先ほどまで何の敵意も見せずに整備作業をしていた【アンドロイド】だ。  どうやら戦闘能力をオプションで追加されていたらしく、口から砲台を伸ばしたかと思うと拳大くらいの砲弾を撃ち出してきやがった。  それが何かなど精査せずとも分かる。  喰らえば死ぬ。  けれど普通に走っていたのでは回避など間に合わない。  もう着弾まで〇.〇一秒ないのだ。 ――俺は迷わず、【背中の翼】を開く。  瞬間、爆発的に【加速】された視界が後方へと高速で流れ出す。  俺の後ろには白と黒の光の軌跡が宙に描かれていて、その軌跡を微塵も揺らすことなく砲弾が通り過ぎていった。  この背には一対の【光の翼】が現出している。  右は【黒】く、左は【白】く、空間に光の尾を引く非物質の翼。  この翼は【加減速】を司る。     
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