△弐

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 闇の中の一点。  一瞬、円形に火花が踊ったかと思うと、その形に分厚い鋼板みたいなものが外れて、そこから光が、漏れだした。  それでようやく、そこが上だと分かる。  何故なら外れた鋼板は重力に引かれるように、真っ直ぐ光源とは反対方向に移動していったから。  この闇の世界に何が起こったのか?  その答えは次の瞬間、すぐに形を伴って舞い降りた。  円形の光源からふわりと緩やかに、まるで水の中を落ちるように現れたのは――天使。  それは、この世の者とは思えぬほど、見ただけでこの思考の全てが奪われるほどの美貌を持っていて。  まず見えたのは黒革の重厚なブーツに、白く滑らかなブーツカットパンツに包まれた鍛え上げられた脚部と、紅蓮の炎みたいな長外套。  その長外套の中の黒いシャツから覗く胸元は、その黒とは正反対に真っ白で、肩幅が広くなければ女性にも見えるほどに透明で。  はっと息を飲んでしまったのは、そのあと。  華奢な顎の線と薄く紅を引いたような唇、すっと通った鼻筋と流麗な眉。  睫毛の長い深蒼の瞳と、細く柔らかそうな金色の髪を併せ持ったその姿。 ――まさに神様に愛されて生まれて来たのだと確信できるほどに、美しかった。     
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