△弐

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 極めつけに背中には【白と黒の翼】が生えている。  浮世離れした美しさと相まって、もはや天使にしか見えない。  その天使が、ゆっくりと降下しながら辺りを見回して、何かを呟いていて。 ――唐突に、目が合う。  ボクと目が合って一瞬驚いたように双眸を見開いた天使は、すぐに頬を弛め、目を細めて微笑んで……何か、口元を動かして喋りかけて来たようだった。 「少し待ってろよ。すぐに助けてやる」  声は聞こえなかった。  でも、そう言ったように思えたんだ。  彼はそれだけ言うと、また円形の穴を通って上に戻ってしまって……。  また闇の中に取り残されてしまったけれど、今度は、あまり寂しくなかった。  彼がまた、会いに来てくれる気がしたから。  それに、いまは先ほどの絶対的な闇の中とは違う。  一条の光が射しこんでいて、少し明るくなっている。  周りを見渡せば、どうやら元々一人ではなかったらしいことにも気づいた。  何人いるのか、何十人かも分からないけれど、ボクのような十代の少年少女や、大人の女性もいて、皆一様に一人用のベッドみたいな籠の中で眠っていて……。  もしかして、ボクもそうなのだろうか?  そう思って、ボクはボクを見ようとして――     
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