△弐

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 下に視線を向けると、ボクの、身体が……顔が、見えた。  あれ?  どう、して……?  ボクは、自分の顔を見ることができるのだろう?  鏡、ではない。  周りの皆と同じように、ボクの身体は、病衣みたいな白装束に包まれて、ガラス張りの一人用ベッドみたいなモノの中で眠っている。  じゃあ、それを見ているボクは、一体なに?  恐る恐る両手を、目の前に持ってくる。  見知らぬ他人の手が映ってしまったらどうしよう?  そんなことを考えながら見えた手は、ボクがよく知る、ボクの白い手だった。  けれど一つ違和感があって、それは……先ほどの天使よりも、肌が透けていたこと。  これは比喩ではなく、物理的に、それこそガラス細工のように反対側が透けて見えていた。  自分の身に何が起こったのか?  一つ思い当たったのは、昔聞いた、幽体離脱の話だった。  人を構成するのは肉体だけじゃない。  肉体と、心と、魂。  その三位一体。  幽体とは、心の体のこと。  幽体離脱とは、心と魂が肉体から分離してしまった状態だと聞いた。  何故、ボクがいまそうなってしまっているのかは分からない。  けれど、それならそれで良いことを思いついた。  ボクの肉体はいま動けないけれど、幽体は自由だと分かったのだから。     
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