△弐

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 そうして上を目指していくうちに、何か黒い感情と、赤い感情のようなものが感じ取れた。  黒は、悪意、かな?  赤は、激情、みたいなモノかも。  きっと、赤が彼だろう。  紅蓮の長外套を思い出して、そちらへ向かうことに。 ……胸騒ぎがする。  黒い感情が、渦を巻いているから。  何か、良くないことを考えているように思えた。  手遅れになる前に、彼に伝えなければ。  壁をいくつもすり抜けながら、気持ちばかりが焦る。  天井をまた突き抜けて、やっと彼を見つけた。  彼は、上下左右に激しく動きながら戦っていて。  数多のアンドロイドに囲まれながら、【白銀の銃】と、【白刃の直刀】で迫りくる全てを切り裂き屠り砂塵に変えていく。  ボクは必死に彼の近くに寄って、彼に伝えようとするんだけど、声が出ない。  彼も、ボクの存在に今度は気づかないみたい。  そうしている間にも黒い渦はどんどん大きくなって、それは弾けようとしていた。  どうすれば……どうすればいい?  想いを伝えるには?  声は出せない。  身振り手振りも意味がない。  心を伝えるには……心を、伝える?  心、幽体とは、心の体。  なら……!  ボクは意を決し、彼に触れた――
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