7. 世界に蔓延る彩色の宴

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 宵闇の天幕を、眩い閃光が斬り裂いた。  地平線の彼方から昇る朝日の絶対的な光量に大気は踊らされ、青褪めていた世界から失われていた熱が、急速に取り戻されていく。  光は、世界を彩る。  空が、鮮烈な紅紫から静謐なる群青に至るまでの無限階調に染められて、夜の眠りから目覚めた荒野は、その色と輪郭を取り戻す。  起伏の激しい岩肌と、点在する枯木が織り成す天地の境界は、灰と塵が混ざった人工物の残骸を赤茶けた土が覆い尽くし、雑多で歪な線の複合体と化している。 ――目を覚ました世界は、既に死んでいた。  我々の生命を育む根源たる木々の緑は、天と地が和合した証である。 【青】き晴れた空と、【黄】色の豊かな土が協力して初めて、【緑】は芽吹く。  天と地が乖離し間が生まれたこの世界では、天は荒み土は渇き緑は枯れ、結果として荒野が広がってしまった。  この浮遊大陸北東部でも、それは同じらしい。  ガタン、と急に俺と愛機【レグナス】を揺れが襲う。  それだけで俺の意識は真に遺憾ながら引き戻される。  同時に冷や汗だ。  運転しながら寝たら死ぬぞ……って、いままで寝てた奴が言っても説得力の欠片もないわけだが。     
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