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ただそれだけで、背中を狙っていた刃は目標をなくし、それを持つ腕は横合いから飛んできたこの手刀に打ち払われ、あまつさえそのまま手首を引き掴まれて関節を極められ、ナイフを取り落とす。
空いていた右手で掌底を作り、腰を入れながら気持ち悪い色した右目に向けて放つと人工眼球は陥没し、勢い余って眼底の骨を粉砕した。
怒号が苦鳴に変わる。
掴んだままの手首を外側に捻り肘関節を内に向けさせて相手の肩関節まで掌握すると、そのまま地面へと叩きつけるように引き倒して、仰向けに寝転がったところを追い打ち。
――右拳で、水月への正拳突きを叩きこむ。
床材を激しく振動させ、腹に響くような轟音が生じる。
……コイツの腹には別の意味で響いてるだろうけど。
「か、はっ……」
硬質な床板との挟撃に突きの威力を逃せず、全てその身で受けた哀れな青年スナイパーは内臓へのダメージが許容限界を超えて息も出来なくなり、瞳がぐるんと上瞼の内に回りこみ、失神した。
「さて……」
俺は身を起こしながら周りに問いかける。
「アンタらは、素直に言うことを聞いてくれるのか?」
口元に笑みを湛えながら眼光で射殺すように見回すと、皆一様に引きつった顔で首を縦に振った。
バカのお陰で良い演出になったな。
「なら、まずは来た道を引き返せ。針路を一八〇度転回。目的地を【王都グレッシャリア】に設定」
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