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さっさと引き上げて、一刻も早く休暇を頂きたい。
そろそろ眠気が限界だ。
……にも関わらず、動こうとしないバカどもめ。
「……ん? おい、どうした。聞いてんのか?」
指示を与えても一向に動こうとしない乗組員に、若干苛立ちを覚えながら問いかける。
すると全員、俺が入ってきた方向――俺の背後、朝日が射しこむ方向を見て固まっていて……なんだ?
その表情が、驚愕から、何やら死を恐れるような恐怖の色へと染められて――!
そこで、はたと気づく。
気づかされる。
射しこむ陽光に、【異様な影】が混じっていることに。
艦橋内に出来た白い光柱の中に紛れこむのは、黒い人影。
俺の後ろには、誰も居ない。
そんなことは振り返るまでもなく、発動しっ放しの【天征眼】が保証している。
なら、どこで光源を遮っているのか。
俺は振り返り、ソイツを見極める。
遅れて鳴り響く警報音。
我が愛機搭載AIが、今更その脅威を報告してきやがった。
『警報。識別不能事象が接近中。識別不能事象がこの船に対して接近中』
「何ボケっとしてんだテメエら!! さっさと動けッ!!」
気づけば声の限りそう叫んでいた。
その声に金縛りを解かれたみたいに乗組員たちは慌ただしく操舵をし始める。
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