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測定士の報告は尻すぼみで、絶望に塗れた弱い声音に変わっていく。
この船は俺から逃げるとき、大体時速五〇〇kmくらいで航行していたな。
追いつかれるのは確定だ、ということか。
何故こんなにも接近されるまで気づかなかったのか?
俺のときはミサイルを打ちこめたくせに。
……まぁ現実問題として、この船の計測システムでも【黒死魔性】の感知は難しいだろう。
奴らは熱も質量もなく、その姿が現れたときにだけ光学的に見えるので、その位置も速度も光学測定器とAIによる判定、もしくは人員による視認しか方法がない。
形状も出現パターンも個体差が大きすぎるが故に基本的には目視の方が早く、だからこそ監視要員が必要なのだが、俺の襲撃で内部に気を取られ、外部監視が疎かになっていたか。
「おい、アンタが船長だな? 俺が時間を稼ぐ。その間に出来る限り王都に近づけ」
恰幅の良い茶髪の暇そうなオッサンを掴まえてそう声をかけると、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔を返してきた。
「き、貴様……儂らを助けてくれるってのか? 犯罪者の、儂らを?」
何を感動してんだコイツは。
すでに踵を返し、艦橋の外――出入り口の方へ足を進めていた俺は、その認識違いを訂正してやることにした。
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