13人が本棚に入れています
本棚に追加
その光量に目を細めながら、決して目を逸らさずその中に潜む影を見据えた。
未だ回旋を続ける船の横。
もうその異様な大きさが分かるほどに、奴は接近していた。
その巨躯は遠くからだと黒一色に見えるのだが、近づけば近づくほど混沌としているのがよく分かる。
黒の中に濃い紫がいり混じり溶けて、その輪郭までも歪めるほどに、霧や靄のように全体が揺らめいていて。
改めて見るとコイツは、現実感がない。
現実の存在とは、到底思えないのだ。
俺らのような生物とも違うし、機械や鉱石のような無機物とも違う。
ではコイツは――コイツらは一体なんだ?
いや……いまはそんなことを考えてる場合ではないな。
【白と黒の対の翼】をはためかせ、俺は宙へ飛び出す。
甲板を抜け、外縁も越えて、船の横を並走するように速度を合わせた。
船の回旋に合わせて少しずつ後尾へと移動し、進行方向に対してくるりと反転し、後ろ向きで飛行しながら、奴と対峙する。
まずは右大腿を少し持ち上げ、ホルスターから【バルク】を引き抜いて、奴の頭部目掛けて引金をひく……何の反応も、効果もない。
やはり物理的な攻撃は、その一切が無効化される、か。
納銃し、腰の後ろに両手を回し、そこに留めてある二本の柄を取り出す。
最初のコメントを投稿しよう!