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新しいマンションへ歩いても十分程の距離を孝は、ユックリ時間をかけて歩いていった。
小、中学校の行き帰りに通い慣れた道を、孝は味わうような気持ちで引っ越しするマンションまでの道端の景色や光を感じながら、歩いていた。
(一人暮らしかぁ。けど、これでは僕の力を勇さんに知られずにすむわ。ほんま、こんなん必要な力やろか?)
孝は自分の身についた不思議な力の事を話さずにいた。
彼にとって迷惑でしかない力を意識したのは、小学生になった頃だった。
まだ、両親が生きており、彼の不思議な力が問題になる前に父と母が彼に、ゆっくりと教え諭していた。
それは、最初の力が彼の頭の中に他人の声を届け始めた時だった。
最初は囁き程度だったが、小学生には十分驚異であり、恐怖だった。
母親にそれを話すと、少し驚いたが孝に優しくこう言った。
「そうなの、凄いわね孝。他の人の心の声が聞こえちゃうんだ。お母さんもね、本当は心の声が聞こえちゃうのよ。だから、孝におんなし力が有っても不思議じゃないのよ。でも、人に話しちゃダメよ。お母さんも人に話して、気持ち悪がられて虐められたからね。」
「えっ、お母さんもなの?やっぱり人に話すと気持ち悪がられるんだ。もう、話さないよ。お母さんとお父さん以外わ。」
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