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携帯を切り、勇二のマンションへ行こうと玄関のドアに手をかけた瞬間、孝は首筋の毛が逆立つのを感じた。
振り返ったが、なにも見えず静まり返っていた。
ただ、ホンの少し部屋の奥の空気が揺らめいているのを、孝は目の端で捉えていた。
(なんやろ?後で確かめよか。逃げりゃへんやろ。取り合えず、ご飯食べてからやわ、時間はタップリあるしな。)
霊的な存在かも知れないと思ったが、部屋を出て勇二のマンションへ向かった。
歩いて十分程の距離をゆっくり味わうように、夕焼けの景色を楽しみながら歩いていた。
何気なく道路の向こう側の花屋を見ていると、何故か懐かしい物を見た感じが孝を捕らえていた。
(なんやろ、前に来たかな?違うなぁ?なんやろ?えっ!クルマ!)
偶然通った男性が、
「アブナイッ!」
叫び声を上げた瞬間、トラックが孝を飲み込んだように見えた。
急ブレーキをかけ、トラックが止まった瞬間、見ていた誰もが事故が起きた事を予想した。
トラックの運転手も人身事故を覚悟したが、衝突の衝撃もなくすぐにトラックを止め、車体の下回りや前後左右を確認したが、何もなかったように人影がきえていた。
運転手がもう一度車体の周りを確かめていると、軽く肩を叩かれた。
「えっ、だれ?えっ、君、今僕の車に引かれた?うそっ!」
運転手はたった今、引きそうになった少年を目の前に見ていた。
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