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第十章 そして
「それは好きだからに決まっているじゃないか!!」
思わず声が大きくなってしまう。
「初めて・・・好きって言ってくれたね」
泣きまくってぐちゃぐちゃになっていた未来の顔に少しだけ笑みが戻りかけた。
「ちょっと化粧直しにお手洗いにいってくるね。」
肩を落とした未来の後姿が俺にはとても痛々しく見えた。
Kissしないと生き延びられないから未来を好きになったんじゃない!
それは断言できるのだが、この状況どういった言葉でとりなせばいいか
俺にはわからなかった。日々が無情にも過ぎ去っていくことに焦りを感じ始めているのかもしれない。
すっきりとした顔になり戻ってくると、未来は、神妙な顔で話を始めた。
「私の家は、みんな国立大学をでていて、私は小学校の頃から、ずっと全部優(よくできました)をとらないとだめだったの。姉も兄も弟もみんなみんな天才、秀才だったの。もちろん父も母も祖父母もT大学出身者。だから、高校時代も、恋もお預けで、必死に勉強したわ。
天才は、99%の努力と1%の天賦の才能と言われていたから・・・でも私にはその1%が足りなかったの」
「だから、眼鏡かけて髪をみつあみにして・・・?」
「でもそんなある日、野球部で一生懸命、下手なのにがんばっている和彦を見かけて恋をしてしまったの。」
もちろんそのせいにはしない。
でも図書室に行ってもなかなか集中できなくて、いつも目で和彦を追っていたの。だから最初に会ったときに名前を間違えたのはわざとなんだ・・・ごめん。」
「そうだったんだ・・・・」
女性にモテたためしのない和彦にとってはまさに晴天の霹靂の話だった。
~第十一章 恋心~
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