6. キスから始まる恋もある!

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「真彦の練習のつもりでキスしたの。失敗は、私のせいだ……ごめん、エレナ」 「私は、失敗したことに怒ってるんじゃありません!」 エレナは叫んだ。 エレナが怒っているのは、今回の熊倉と真彦の恋仲が失敗したことに。では、無かった。 今回の失敗は、いわば事故のようなものだ。失敗はキューピッドにとって、つきもの。 時に、恋は運が左右することもある。 その日の気持ちや気分次第で、結果が変わってしまうこともある。 自分の仕事相手の恋が失敗したのは、やはりとても悲しいことだ。けれども、それよりもはるかに大切なことが、あった。エレナが怒っているのは、そのことだった。 「わかっているはずですよね!?私達、天使がそんなことをしたらーー」 エレナは言葉を詰まらせ、泣きそうな顔で言った。 「墜ちてしまうんですよ!?」 クリスタは、何も答えなかった。 「私達は、清い存在。恋仲をお助けするのが私達のお仕事ですが、私達に恋は禁じられています。私達がそういった行為をしたら、『堕天使になる』ということは分かっているはずですよね!?」 天使は恋を運ぶ清い存在。そんな天使にとって、愛を意味する行為は禁じられており、それを破り汚れを犯した天使は『堕天使』に墜ちる。 それは、天使であれば誰もが知っている常識であり禁忌。 「翼を、見せてください」 エレナの言葉に、躊躇したクリスタだったが、引きそうにないエレナを見て、しぶしぶ羽を広げた。 バッと開いた天使の翼。 エレナは、クリスタの翼を見て絶句した。
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