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「えーッ!アオイちゃんのお腹の中に、赤ちゃんがいるの?」
「ああ。エコーの写真も見せてもらったよ。まだ4ヶ月だけど・・・」
「っていうか、オジサマと結婚してるんでしょ?何で今頃?」
「きっと、オレに気を遣って子供を作らなかったんだろうね。でも、アオイにも、女の幸せを味わわせてやりたいから・・・言ってやったんだ。アオイみたいな妹が欲しい、って。」
「子供を・・・作る?」
まだ小学生だった私には、正直、よく分からなかった。
当時は、結婚したら誰もが自動的に妊娠するものと思っていたし・・・女の幸せなんて考えた事もなかったから。
「まだ・・・分からない?」
「・・・うん。」
「じゃあ、いつか・・・オレが教えてやるよ。」
あれは、いったい・・・どういう意味だったのだろう?
夜道を並んで歩きながら、昂くんの方へゆっくりと左手を伸ばした。
「フフッ・・・あいかわらず怖がりだな。」
「・・・ごめん。」
繋いだ手から、昂くんの温もりが伝わって来る。
いつもと変わらない、昂くんの温かい手・・・
昔から、ずっとずっと変わらない・・・昂くんの・・・
「ねえ、昂くん・・・」
「・・・ん?」
「見て、月がとってもキレイ・・・」
「ああ。」
まるで昂くんのように、穏やかに照らし続ける月の光・・・
私は、夜空に浮かぶ月を眺めながら、ひっそりとこの恋の行方に思いを馳せた。
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