最終章

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・・・フフッ。 いったい誰に似たのか分からないが、人生の9割をポーカーフェイスでやり過ごせそうな父でさえ頭を抱えてしまうほど、無鉄砲な2人の妹たち。 年々、成長して幼さが抜けて行く彼女たちを前に、父の苦悩も増える一方のようだ。 「まったく・・・しょうがないな。」 オレは、近況の報告とともに、先日登った展望台「ベッセル」の写真を何枚か添付した。 ベッセルは、マンハッタンの西側、ハドソン川沿いのパブリックスペースに建てられた展望台で・・・ おそらく、理数系の人間なら誰もが心を躍らせる、規則的な3次元空間充填(じゅうてん)を兼ね備えた「ハチの巣」のような外観の巨大建造物は、見るだけでなく実際に登る事も出来る体験型のアート作品であり、ニューヨークの新名所との呼び声も高い。 オレも、初めてこの展望台を見た時は、その圧倒的な大きさと美しさに思わず声を上げるほどだった。 『今度ニューヨークに来たら、連れて行ってあげるよ。』 フフッ・・・これで桃も、少しは機嫌を直してくれるだろうか? メールを送信して、一人ほくそ笑む。 しかし、その笑みもすぐに消えてしまった。
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