最終章

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弁明も何も・・・そもそも寝取ったわけじゃないし。 オレは、憮然とした教授の顔を覗き見ると、諦めて大きなため息を吐いた。 「はぁ・・・分かったよ。全部話せばいいんだろ?」 「Yes!」 教授は、膝の上でこちら側に向き直ると、瞳を爛々(らんらん)と輝かせながらオレの話に耳を傾けた。 そう・・・あれは、2週間前の金曜日の事。 休日を控えたオレとボブは、帰りがけに、夕食がてらバーに寄って帰る事にした。 メトロポリタン美術館前の5thアベニューから、イースト79thストリートに入ってしばらく行ったところにある、こじんまりとしたレストランバー。 以前、研究室の仲間に教えてもらったこのバーは、スペイン人の店主が作るパエリアが美味いと評判の店で・・・ やたらと量が多くて大味の肉料理に飽き飽きしていたオレは、ひと口でここのパエリアのファンになった。 以来、数回訪れているお気に入りの店なのだが、ここにはウチの大学の生徒も大勢出入りしているようで・・・ あの日は週末のせいか、けっこう店も混んでいて・・・待ち時間にしびれを切らして帰る客も何人かいた。 そんな中、たまたまボブの知り合いの女子生徒が2人で店に入って来たものだから・・・ 「ハイ、キャサリン。今日は混んでるみたいだし、待つのも大変だから・・・よかったら、一緒にどう?」 「え、いいの?じゃあ、有難くご一緒させていただくわ。私たち、お腹がペコペコなの。」 というわけで・・・ オレたちは、急遽、4人でテーブルを囲む事になったのだ。
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