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「言っとくけど、オレ・・・感謝祭のパレードを観に行くつもりなんて、これっぽっちもないからな。」
「おーおー、負け惜しみを言っちゃって・・・正直に言ったらどうだ?一緒に行ってくれる女の子がいなくて寂しい、って。」
「ふんッ・・・そもそも、そんな事のためにココへ来たわけじゃないんだよ、オレは!」
そう、オレは、純粋に研究をするために・・・
そう言い返そうとした瞬間・・・まんまと教授の悪戯な瞳に捕まった。
「そういえば、さっき・・・新しい日本人留学生の子が挨拶に来てくれてね。『ずっと前から、教授の講義を受けたいと思ってたんです。頑張りますので、よろしくお願いします!』だって。フフフッ・・・可愛かったなぁ、彼女。」
「・・・ふーん。」
「美人で奥ゆかしくて利発そうで・・・彼女に会えば、きっとキミも気に入るんじゃないか?と思うけど・・・でも今回は、私が目当てで入学して来たようだからね。そう簡単には渡さないよ。」
「ふん、べつにいいよ・・・興味ないし。」
「フフッ・・・それにしても、日本人は素晴らしいな。本当に勤勉な人が多い。」
「・・・だろ?」
教授の日本人好きは有名で、だからこそ、オレをニューヨークに連れて来てくれたんだろうけど・・・
こうやって時々、海の向こうにいる人たちを根本から肯定してくれる教授の優しさが・・・オレは、好きだ。
「ま、任務完了まで、あと一息。戯言は置いといて、一気に報告書を書き上げちゃおうぜ。」
「フフッ・・・あいかわらず、勤勉だ。やっぱり、キミを連れて来て正解だったな。」
教授はそう言うと、オレを見上げてニッコリと笑った。
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