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そう確信をして、一歩ずつ・・・彼女に近づいて行く。
どうやら彼女は、石灯篭の存在に驚いているらしく、オレが後ろに立っている事などまったく気づいていない。
・・・そして、
「・・・ねえ?」
オレの声に気づいた彼女が、ゆっくりと振り向く。
「知ってた? 切れたミサンガは、すぐに捨てないと願いが叶わないらしいよ。」
その瞬間・・・両手を広げた彼女が、オレの胸に飛び込んで来た。
「こ・・・昂くーーん!!」
「・・・千里。」
久しぶりに抱きしめた彼女の身体は、とても柔らかくて・・・
フワッと漂う甘い香りも・・・あの日のまま・・・
「フフッ・・・こんなとこで、何してんの?」
「昂くんに・・・昂くんに、どうしても会いたくて・・・」
「うん。」
「昂くん・・・私を迎えに来てくれるって言ってたでしょ?でも、そんなの待ってられないもの。だから、こっちから行ってやろうと思って・・・」
「フフッ・・・それが、千里のやりたい事だったんだ?」
「うん。」
『待たない。』
彼女は、そう言ったあの時から・・・ずっと、今日という日を夢見て過ごして来たらしい。
ミサンガに込めた願いは、アメリカへ行く事だった、と・・・後で教えてくれた。
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