いたずら電話

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 すぐにここに来るだって? 警察に捕まってる状態でか?  バカバカしい。そんなの無理に決まってる。というかそもそも、さっきも思ったが、拘留中に電話をしてきていること自体がおかしいのだ。  きっと誰かのいたずらだ。この電話自体が、あいつがかけてきたものではなく、どこかの誰かのいたずら電話だ。  …だとしても、どうしてそれが俺のスマホにかかってくるのか。相手は俺をじいちゃんと呼び続けたのか。  判らないことが幾つもあり、混乱していると、ふいに着信が入った。  相手は大学の友達で、確か、今捕まっているアイツとはそこそこ交流のあった奴だ。  嫌な予感がして慌てて出ると、開口一番、さっき妙な電話があったと告げられた。聞けば、通り魔事件を起こしたアイツから電話が入り、俺の住所を聞かれたという。もちろん常ならそんなことを教えたりはしないが、電話の様子が尋常ではなく、うっかり答えてしまったらしい。  謝罪い共に電話が切れる。だがものの五秒と間を置くことなく、同じ相手からまた着信があった。  今度は何だというと、テレビが近くにあったらすぐに見てみろと言われた。慌てて部屋のテレビをつけると、キャスターが臨時ニュースを告げていた。  通り魔事件を起こした男が、警察の取り調べ室内で、刑事の備品を奪って自殺した。自殺の動機は、事件の同期と同じく不明。  その内容に思考が乱れる。  さっきの電話で、アイツはすぐに祖父だと信じ込んている俺のところへ来ると言った。なのに、どうしてそいつが自殺するんだ?  混乱で考えがまとまらない。そんな俺の耳にまた着信音が響いた。  今度は何のニュースだと、そう怒鳴りかけて言葉を詰まらせる。  俺はいつ通話を終えた? そもそも、今電話をかけてきているのは、さっきまで話していた友達か?  おそるおそるスマホの画面に目をやる。そこに表示された名前は……。  俺が設定した着信音がいつまでもいつまでも鳴り響く。そのメロディの中に、微かに、俺を『じいちゃん』と呼ぶ声が聞こえた気がした。 いたずら電話…完
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