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よく晴れたある日の午後、朱美は車に乗って、スーパーへ買い物に行った。
向かうスーパーは、朱美が住むマンションからは少し距離がある。どこにでもあるチェーン店の一つであるその店に、わざわざ車をとばしてまで買い物に行くのには理由があった。
価格が安い店だから、という理由ではもちろんない。しかし、理由をもし誰かに話したとしたら、その相手は顔をしかめることだろう。自分でもいい趣味とは思わない。それでも、週に一度はあのスーパーに行ってしまうのだ。
駐車場に車を止めてドアを開けると、じっとりと蒸し暑い。七月に入って、もうすっかり夏の空気だ。
店内に入ると、冷気が心地良い。とはいえ、こういったスーパーは冷房が効きすぎているので、すぐに肌寒くなるだろう。
店に入ってすぐのところに、笹が飾ってあった。明日は七夕だから、こういったものが飾ってあるのは珍しくはない。それを横目に見て、朱美は店内へと足を進めた。
今夜のメニューはハンバーグだ。娘の結愛からのリクエストだった。
買い物カゴに玉ねぎとニンジンを放り込みながら、娘との会話を思い出す。
『ゆめ、ママのつくったハンバーグがたべたい! おほしさまがのってるの!』
『お星さま?』
にこにこと娘が見せてきた画用紙には、ハンバーグらしき茶色の楕円とオレンジ色の星が、クレヨンで描かれていた。
――ああ、ニンジンを型抜きしたやつか。めんどうだな。
そう思ったが、期待を込めた目で見てくる娘を無碍にはできず、了承したのだ。
普段あまり構ってやれてないから、たまには母親らしいこともしておかないと。という打算もある。
本当は料理なんて好きじゃない。他の家事だって、ここ最近は仕事にかこつけて最低限しかやっていない。
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