第2章 毒の花

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   葬儀の日、棺の中の、あの女を見て実感する。  ……ああ、よかった。ちゃんと死んでくれたんだ。  込み上げる昂りに似た感情を、嘘の涙で飾り立てる。 「唯花ぁー!」  彼女が納まった棺の前で、声を張り上げて泣いた。  泣き崩れながら、でも、心の奥底で笑っていた。  本当、自分でも称賛したくなるくらい名演技。  やっと、死んでくれたのね。  今だけは、皆と同じようにあんたの死を悲しんであげる。  あんたの失敗は、私を甘く見すぎていたこと。いつも、何も出来ない女と思ってたでしょう?  ――油断大敵よ。  
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