第1章 奪う女

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   ――8月に入り、とうとうその日を迎えた。  外は天気予報どおり晴れで、雲ひとつ見当たらなかった。  真っ昼間、照りつける太陽がじりじりと暑い。  天気も味方してくれたのね、きっと。  だだっ広い河原にはちらほらいたけど、すぐに見つけられた。  律さん……、  相変わらず優しい笑顔。  今見せているその笑顔は私に向けられたものじゃないけれど、いいの。  だって、もうすぐ―― 「あっ、茜ぇー!」  甘い空想から現実に引き戻した、私を呼ぶ甲高い声。  
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