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「香今日、何時に帰んの?」
尚人が背の低い1人掛け用ソファの肘掛けの一方を枕にして床に座っている。両足は高く上げ壁を押しているが、両膝はぴたっとくっつけて軽く曲げているため、下品だけど質が良い。
目線は携帯画面を見たままだ。きっとアプリで麻雀をしているのだろう。
私は今さっき、尚人の家に来たばかり。
「明日朝早いから、22時には帰ろうかな。」
会うのは月に1度。尚人は住宅メーカーの営業マンで、私は市役所で働く公務員。お互い休みが全く合わない為、会うのは尚人が休みの日の水曜日。もちろん私は仕事がある為、夜だけ。場所は大体、一人暮らしの尚人の家。
「ん。りょーかい。」
尚人と私は、大学3年生の時、学部は違うが講堂で開催されていた就活のオリエンテーションで初めて出会った。仲の良い友達は親のコネで就職先が決まっていたから、私は1人だった。そのとき、たまたま1人でいた尚人が私の隣に座った。
ちらっと√の格好をしている尚人を見る。
見た目は、7年たった今でも良い方だと思う。
だからだろうか?それとも大学3年生で単純に焦っていたからだろうか。
生まれて初めて、自分から連絡先を聞いた。
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